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ベアリングハウスのフレッティングを防ぐ方法

フレッティングの防止が想像以上に重要である理由

食品業界では、あらゆる部品が衛生面、効率、長期的な信頼性に貢献しなければなりません。フレッティング腐食は、軸受の早期損傷の最も一般的でコストのかかる原因の一つですが、衛生的な環境で使用されるステンレス製ベアリングユニットにおいては特によく発生します。それにもかかわらず、見過ごされたり誤解されたりすることがよくあります。私たちが現場で目にする損傷の多くは、単純で予防可能な問題、つまり不適切な取り付けに起因しています。

NGIでは、日常運転時に潤滑剤を必要としない軸受を設計しています。しかし、設置時のメンテナンスが不要というわけではありません。グリースは、長期的な潤滑剤としてではなく、シャフトと軸受の内輪間の微小な滑りを防ぐ物理的なバリアとして不可欠です。グリースを塗布しなければ、数日のうちにフレッティングが発生する可能性があります。

この記事では、フレッティングとは何か、なぜ発生するのか、そして適切な取り付けによってフレッティングをほぼ完全に防止できる理由について説明します。


文:NGI、カテゴリーマネージャー、オースティン・デービス

”それは、ペーストの塗布を省略しないこと、トルクを当て推量しないこと、「潤滑剤フリー」が「メンテナンスフリー」を意味するとは考えないことです。

オースティン・デービスNGI、カテゴリーマネージャー

フレッティング腐食とは

フレッティングとは、接触している2つの金属表面間で微小な運動が繰り返されることによって起こる摩耗の一種のことです。ベアリングの仕組みでは通常、シャフトと内輪の間で発生します。このような微小な運動は一見無害に見えますが、時間の経過とともに表面材料が摩耗し、酸化して赤褐色の摩耗粉が生じます。この摩耗粉は摩耗を加速させ、シャフトの表面を傷つけたり、軸受を変形させたり、極端な場合にはアセンブリ全体を固着させたりします。


フレッティングが危険なのは、ゆっくりと、そして多くの場合静かに進行するからです。性能に影響が出るほど損傷が進行するまで、明らかな不具合は見られません。気づいたときには、費用がかかるダウンタイム、部品の交換、業界によっては製品汚染のリスクに直面することになります。

フレッティング防止におけるグリースの役割

フレッティングを防止する最も効果的な方法は、取り付け時に高粘度のフレッティング防止ペーストを使用することです。NGIのベアリングは、運転中は潤滑剤を必要としませんが、取り付け時にグリースを塗布することにより、シャフトとベアリングの間でクッションの役割を果たします。表面の微細な凹凸を埋め、摩耗につながる振動の一部を吸収するのです。


SKF LGAF 3Eなどのフレッティング防止剤の使用をおすすめします。このタイプのペーストは、微小な運動を抑制するよう特別に配合されており、高荷重・高温下でも安定しています。フィールドテストでは、フレッティングを防止するだけでなく、分解を容易にする効果も確認され、メンテナンス間隔の観点からは大きなメリットになります。
ある比較テストで、潤滑剤無しの条件と有りの条件で同じベアリングを2つ取り付けました。潤滑剤を塗布しなかった軸受は、1週間も経たないうちにフレッティングの兆候が現れ始めました。一方、潤滑剤を塗布した軸受は、長時間運転した後、ペーストを意図的に除去して検査しても、目に見える腐食は確認されませんでした。

トルク設定が重要な理由

締め付けトルクは、潤滑と同様に重要です。止めネジの締め付けが甘いと、グリースを塗った軸受でもシャフト上で滑り始めることがあります。当社で、軸受に275kgの荷重をかけて800rpmで回転させる実験的なシミュレーションを実施しました。グリースを塗布せず、ネジが緩んだ状態で取り付けた場合、テストサイクルの95%でフレッティングが発生しました。グリースを塗布し、止めネジを適切なトルクで締め付けると、不具合率は90%以上低下しました。
最良の結果を得るには:

  • 取り付け前に必ずシャフトを清掃する。
  • 内輪の内側にフレッティング防止ペーストを均一に塗る。
  • 校正された工具を使用し、止めネジを推奨どおりのトルクで締める。
  • 運転開始から24時間が経過すると、沈下や振動によりトルク設定がわずかに緩むことがあるので、トルクを再確認する。

上記の手順は迅速かつコストをかけずに実施できますが、耐用年数に大きな違いをもたらします。

潤滑剤フリーはメンテナンスフリー?

これはよくある誤解です。NGIの軸受は、通常の使用条件下ではグリースやオイルなしで動作するように設計されているため、汚染リスクが低減され、洗浄手順が簡素化されます。しかし、だからといって、取り付けを軽視してよいというわけではありません。 取り付け時のグリースは、食品を扱うときの手袋と同じように、一時的な保護が目的だと考えてください。包装時には不要かもしれませんが、準備の段階で省略すると、早期に問題が発生します。

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取り付けとアライメント:隠れた貢献者


潤滑とトルクが完璧でも、取り付け不良が原因で問題が発生することがあります。シャフトのサイズが小さかったり、真円でなかったりすると、はめあいが緩くなり、振動が起こる可能性が高くなります。2つのベアリングユニット間のミスアライメントによっても、内部に不均一な力が発生し、振動が起こる可能性があります。

当社からのアドバイス:

  • シャフトの公差をメーカー仕様と照らし合わせてご確認ください。NGIでは、すべての製品仕様書に詳細な適合推奨事項を記載しています。
  • アライメントツールを使用して、2つのベアリングユニットがシャフトに対して直角に向いていることを確認してください。
  • 同心度と直径が適正であると確認されていない限り、磨耗したシャフトや再加工されたシャフトの使用は避けてください。


これらのチェックは些細なことに思えるかもしれませんが、多くの場合、原因不明のフレッティングの根本原因となります。

実際のテスト結果

取り付け方の重要性を明らかにするため、2つの同じベアリングユニットに対して、条件を管理したフィールドテストを実施しました。

  • テストA:フレッティング防止剤を塗布せず、止めネジを手で締める
    結果:5日も経たないうちにフレッティングが始まり、シャフトの傷や軸受の異音が確認されました。
  • テストB:SKFフレッティング防止剤LGAF 3Eを塗布し、止めネジを締め、24時間後に再確認する
    結果:21日間運転し、接触面を清掃した後も、目視できるフレッティングは確認されませんでした。

上記のテストは、理想的なラボ環境で実施されたものではなく、温度変化、洗浄手順、日常的な振動など、実際の環境で起こりうる変動を反映しています。また、適切な取り付け手順が部品の信頼性を劇的に向上させることを証明しています。

 

フレッティングが発生した場合の長期的コスト


軸受の損傷だけを見れば軽微なものに思えるかもしれませんが、蓄積するコストは多額になる可能性があります。フレッティングに関連した損傷は、シャフトの損傷につながることが多く、修理にはより高額な費用と時間がかかります。衛生面では、ダウンタイムが洗浄スケジュール、監査コンプライアンス、生産目標にも影響する可能性があります。

計画外の停止が発生するたびに、生産損失と技術者の作業時間の損失として数百ユーロのコストがかかるとすれば、設置時にわずかな労力を追加でかけて年間数件の事故を回避するべきです。

推奨事項

フレッティングという設備の損傷を回避したいのであれば、解決策はシンプルで実証済みです。それは、ペーストの塗布を省略しないこと、トルクを当て推量しないこと、「潤滑剤フリー」が「メンテナンスフリー」を意味するとは考えないことです。

次のベストプラクティスに従うことを推奨します。

  • 取り付け時に高粘度のフレッティング防止ペーストを使用すること
  • すべての接触面を十分に清掃すること
  • 止めネジを適切に締め、24時間後に再確認すること
  • ラインを稼働させる前に、シャフトの公差と軸受のアライメントを確認すること

 

上記の手順は数分で完了しますが、軸受の寿命を数週間から数か月、延ばすことになります。避けられる問題の解決に時間を費やす必要はありません。

サポートが必要ですか?

取り付け方法、トルク仕様、ペーストの適合性などに関してご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。喜んでサポートいたします。


- NGI、カテゴリーマネージャー、オースティン・デービス

Austin Davis, Global Category Manager – Bearings  United States, NGI

著者オースティン・デービスについて 

主に食品・飲料業界において、技術営業と製品管理の分野で10年以上の経験があります。NGIでは、ノンレベリングハイジェニック部品のグローバル開発リーダーとして、OEM、エンドユーザー、販売代理店と緊密に連携しながら、実用的で高性能なソリューションを市場に投入しています。

これまで、セールスエンジニアリングとテリトリー管理の業務に携わり、ベアリング、シーリングソリューション、ハイジェニック機器を中心に担当してきました。また北米全域のお客様をサポートし、技術的な課題の解決、機器性能の最適化、厳しい衛生要件への適合を支援してきました。データ、顧客インサイト、そして製品イノベーションは実際のアプリケーションニーズに応えるものでなければならないという強い信念が、私の原動力となっています。

 

鎖は最弱の輪の如し

ハイジェニックデザインは、単に認定された衛生的な部品を選ぶということではありません。

チェーンは最弱のリンクより強くなることはありません。そのため、生産環境と生産ライン全体を評価する必要があります。

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